「体が硬いとバレエは無理なのかな」と思いながら、それでもレッスンに通い続けている方は多いです。
ストレッチのたびに他の生徒さんとの差が気になる。開脚で床に手がつかない。先生に「もう少し伸ばして」と言われるけれど、これ以上は痛くて無理——。
ストレッチで強く引っ張りすぎると、体に余計な力が入り、かえって伸ばしにくくなることがあります。
頑張って伸ばしているのに、なぜ硬いまま?

「体を柔らかくする方法」を探して、ストレッチの種類を増やしてきた方も多いと思います。
ストレッチのとき、ぐっと引っ張って、歯を食いしばって耐える。そのやり方で長年やってきたけれど、なかなか変わらない——という方は少なくないです。
筋肉を急に強く伸ばすと、縮もうとする反応が起こりやすくなります。また、痛みを我慢して姿勢を保とうとすると、伸ばしている部分だけでなく、肩や脚の付け根などにも余計な力が入りやすくなります。
痛みを我慢して伸ばすことが、むしろ体を固める方向に働くことがあります。
柔軟性を高めたいときは、力で引っ張る前に、痛みが出ない範囲まで強さを戻し、余計な力をゆるめることから始めます。
「私は硬い」という思い込みが、体をぎゅっとさせる
もうひとつ、気になるのが「体が硬い人は伸びない」という思い込みです。
ストレッチの姿勢をとったときに「また痛くなりそう」「どうせ届かない」と身構えると、痛みに備えて肩や脚の付け根に力が入りやすくなります。まずは、どこまで届くかではなく、無理なく呼吸を続けられる位置を探してみてください。
ストレッチ中に呼吸が止まるほど力を入れている場合は、一度姿勢を戻したり、伸ばす強さをゆるめたりする目安になります。
呼吸を続けられる範囲を確認する

脚を軽く前に伸ばして座り、膝を少し曲げます。その姿勢のまま、無理のない範囲で上体を前へ傾け、ゆっくり息を吐いてみてください。
このとき、肩やあご、脚の付け根に余計な力が入っていないかを確認します。呼吸が止まりそうになったら、楽に呼吸できる位置まで姿勢を戻しましょう。
同じ姿勢でも、余計な力が入っているときと、呼吸を続けながら動けるときでは、伸ばしやすさに違いを感じることがあります。強く引っ張ることより、この違いを確認することから始めてみてください。
余分な力が抜けると、体はどう動きやすくなるか

「力まずにいると逆に体が崩れそう」と思うかもしれません。これはよく聞かれる感覚です。
でも、バレエの動きの中で体が安定しているとき、力で固めているのではなく、体全体がひとつにまとまって動いていることが多いです。
体の軸があると、腰や脚の付け根など、特定の部分だけで姿勢を支える必要が減り、負担が全身へ分散します。軸が柔軟性そのものを高めるわけではありませんが、すでに持っている可動域を使いやすくなります。
軸によって動きが変わる理由は、バレエで体の軸ができると、踊りはこう変わるでも説明しています。
たとえばバーレッスンの前屈では、反動をつけず、股関節から上体を前へ傾けます。息を吐きながら首や肩、脚の付け根の余計な力をゆるめると、上半身の重さを使って無理のない範囲で伸ばしやすくなります。
開脚でも、股関節の付け根を力で固めていると、脚を開きにくくなります。余計な力が抜けると、柔軟性が急に増えるのではなく、もともと動ける範囲を使いやすくなります。
必要以上の力で固めると動きにくくなり、余計な力が抜けると動ける範囲を使いやすくなる。 この感覚は、ストレッチだけでなくバレエ全体の動きにもつながります。
バレエのストレッチと「体の使い方」は別物ではない
バレエの上達を考えるとき、柔軟性と技術は切り離して考えられやすいです。「先に体を柔らかくして、それから動きを磨く」という順序で取り組んでいる方も多いかもしれません。
でも、ストレッチのやり方そのものが「体の使い方」の練習になっています。力で伸ばすクセがついていると、ターンのときも、アームスのときも、その力みが出てきます。余計な力をゆるめながら動く感覚を覚えると、ストレッチで確認した体の使い方を、ターンやアームスにもつなげやすくなります。
肩の力みとバレエの動きの関係については、バレエで肩が上がる原因は?肩の力を抜く5つのチェックポイントで説明しています。大人から始めたバレエで力を抜くことの意味が気になる方は、大人からバレエが上達する人の共通点|レッスンを生かす5つの習慣もあわせてご覧ください。
足を高く上げる動作でも、同じ考え方が使えます。バレエで足を高く上げたい人へ|力むほど上がらない理由と引き上げのコツも参考にしてみてください。
よくある質問
大人から始めて体は本当に柔らかくなりますか?
「急に開脚できるようになる」という変化ではないことが多いですが、動きやすさが変わった、ストレッチが以前ほどつらくなくなった、という方はいます。大人から始めた方でも、痛みを我慢して伸ばす方法だけでなく、呼吸や力みを確認しながらストレッチする方法を試せます。「もう遅い」と決める前に、伸ばし方を見直してみてください。
体が硬いとバレエはやっぱり不利ですか?
大きな可動域が必要な動きでは、体の硬さが動きを制限することがあります。ただし、柔軟性だけでバレエの上手さが決まるわけではありません。軸や筋力、力みの少ない体の使い方も、動きを安定させるために必要です。
体の軸や力みの違いを直接確認したい方は、こちらもご覧ください。バレエのストレッチを指導するものではありませんが、イスから立ち上がる動きなどを通して、力まず動ける状態を体で確かめられます。

