レッスンの後半、ピルエットの番になると、視界がぐるりと流れる感覚がある。回り終えた瞬間、着地の足を探すのが精一杯になる。
そういう経験をくり返しているうちに、「自分はピルエットが苦手なのかもしれない」と感じはじめた方もいると思います。でも、目が回りやすいかどうかは、体の使い方と深くつながっていることが多いです。
この記事では、ピルエットで目が回りやすいときに体の中で何が起きているのか、そして軸をまっすぐに保つための体の使い方について書いていきます。
目が回るのは、たいてい回り終わった直後だった

回転しながらじわじわと視界がぐるぐるしてくるのではなく、多くの場合「回り終えた直後」や「2回転目に入るとき」に目が回る感覚を強く感じます。
1回転のうちはまだ踏ん張れるけれど、着地の瞬間に視界が定まらない。あるいは回転が終わっているはずなのに、体の感覚がまだふらふらと回り続けているような気がする。
そのとき体の中では、上から下まで何かがずれながら動いています。どこかに余分な力みが入っていると、回転のたびにその力みが積み重なり、視界も安定しにくくなります。
上半身に力みがあると、視界が流れやすくなる
ピルエットで目が回りやすいとき、肩や首、あるいは腕に力みが入っていることが多いです。力んでいるというより、「耐えようとしている」という感じに近いかもしれません。
上半身に力みがあると、体の中心がぐらぐらしやすくなります。視線を一点に戻そうとするスポッティングも、体そのものがブレていると追いつかなくなります。
「もっと力を抜いて」と言われてもどうすればいいかわからない、という気持ちは当然で、力みは部分だけを意識しても抜きにくいものです。全身がひとつにまとまってくると、上半身の力みも自然に落ち着いてきやすくなります。
スポッティングは「顔だけ速く動かす」ことではない
スポッティングとは、回転中に視線の基点を決めて、顔をひとつの方向に素早く戻すことです。「顔をパッと返して」と言われることが多いですが、顔の動きだけを意識しても、なかなか目が回る感覚は減りにくいです。
スポッティングが機能するのは、体の軸が安定しているときです。体がぶれながら顔だけ速く動かしても、視界はむしろ乱れやすくなります。
軸がまっすぐ保てていると、視線の基点を「置いておく」感覚が出てきます。顔を急いで戻そうとしなくても、ふわっと戻ってくる感じ、と表現できるかもしれません。顔の速さより、体の状態が先にある、というイメージです。
軸足に「乗る」とは、どういう感覚のことか
「軸足にちゃんと乗って」とよく言われますが、乗ろうとして力んでしまうと、逆に体が固まりやすくなります。
パッセで片足に立つとき、グッと力で踏ん張るのではなく、重心がすっと一本に集まっていく感覚、と表現できるかもしれません。足裏の全体に均等に体重が分散しているとき、軸足への「乗り」が安定しやすくなります。
力んで乗ろうとすると、体が横にぐらつきやすくなります。ぐらつきを感じるとさらに力みが入り、視界もより流れやすくなります。この連鎖がくり返されていることが多いです。
重心が自然に軸足へ集まっているとき、回転中も視界が比較的落ち着いてきます。軸がまっすぐ保てていると、目が回る感覚も変わりやすくなります。
軸足の感覚をもう少し丁寧に整理したい方は、ピルエットが回れない大人への記事も参考にしてみてください。
上半身の力みが抜けてきたとき、視界が落ち着いてきた
体の軸がまっすぐ保てるようになると、肩や首の余分な力が抜けやすくなります。力みが落ちてくると、腕の重さが自然に下に収まる感覚が出てきます。
あるとき、プリエから立ち上がるタイミングで「あ、ふわっと体が伸びた」という感覚があった、という話を聞きます。回そうとしていたのに、気がついたら回れていた、という経験です。
「回そうとしない」という表現は難しく聞こえますが、体の状態が整ってくると、自然と回転が起きやすくなる感覚として理解できます。2回転を目指している方にとっても、まず1回転の軸が安定してくることが先につながりやすいです。
2回転の感覚については、バレエのダブルターンが崩れるでも軸を最後まで保つ視点で書いています。
また、体の軸を整えるベースとして、体幹の「使い方」についても知っておくと理解が深まります。ダンスの体幹は「鍛える」より「使う」の記事もあわせて読んでみてください。
上半身の力みについては、バレエで「肩の力を抜いて」と言われ続ける人へでさらに詳しく書いています。
よくある質問
ピルエットで目が回ってしまう原因は何ですか?
体の使い方の面から見ると、上半身の力みや軸の乱れが関係していることが多いです。スポッティングの顔の動きだけを意識しても改善しにくいのは、体の軸が安定していないと視線の基点を保ちにくいからです。体全体がひとつにまとまってくると、目が回る感覚も変わりやすくなります。なお、ここでお伝えしているのは体の使い方の話です。体の不調や症状については、専門の医療機関にご相談ください。
顔の向きはどうすればよいですか?
スポッティングは「顔をいかに速く動かすか」より「どこに視線を戻すか」を先に決めることが大切です。基点を決めて、体の軸がまっすぐ保てているとき、顔はすっと戻りやすくなります。顔を急いで返そうとする意識より、体の状態を整える意識を先に置いてみると変わりやすいです。
軸足への乗り方がよくわかりません
乗ろうとして力むのではなく、重心が自然に一本の軸へ集まっているイメージが近いです。足裏の全体で床を感じているとき、体がぐらつきにくくなります。「乗る」という感覚は、力を入れた結果ではなく、力みが抜けてきたときに感じやすいものかもしれません。
2回転を目指していますが、目が回ることが増えました。1回転より難しいですか?
2回転に入ると、1回転のときより上半身が力みやすくなります。「もう1回まわさなきゃ」という意識が、体を固めてしまうことがあります。2回転は1回転を2回するというより、1回転の軸の状態をもう少しだけ続けるイメージで入ると変わりやすいです。詳しくはバレエのダブルターンが崩れるもご参照ください。
体の使い方を、まず体験してみることから
ピルエットで目が回る感覚が続いているとき、「もっと練習しなければ」とがむしゃらに回数を増やしても、変わりにくい場合があります。
体の使い方そのものに目を向けることで、変わりやすくなることがあります。まずは実際に体で感じてみることが、一番の近道かもしれません。


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