レッスンの後半、ピルエットの番になると視界がぐるりと流れる。回り終えた瞬間、着地の足を探すのが精一杯になる。こんな経験はありませんか。
回転すると、目から入る景色が大きく動き、内耳にある平衡感覚も回転を捉えます。回転を止めたあともしばらく回っているように感じることがあり、これが目が回る感覚につながります。
バレエでは、同じ場所へ視線を戻す「スポッティング」を使って、方向を見失いにくくし、目が回る感覚を抑えます。この記事では、スポッティングのやり方と、姿勢を崩さずに練習するポイントを説明します。
回転すると目が回るのはなぜ?

回転中は、景色が流れる視覚情報と、内耳が捉える回転の情報が続けて入ってきます。回転を止めても、その感覚がすぐには収まらず、周囲や自分の体がまだ動いているように感じることがあります。
特に、視線を決めずに景色を追い続けたり、短時間に何度も回ったりすると、方向を捉えにくくなります。目が回る感覚は上半身の力みだけで起きるものではありません。
目が回ることと、ターンでふらつくことは分けて考える
目が回る感覚には、回転による視覚や平衡感覚への刺激が関係します。一方、ターン後のふらつきには、軸脚に立てているか、上体が傾いていないか、着地まで姿勢を保てているかも関係します。
肩や首を固めると顔を返しにくくなることはありますが、力みを抜くだけで目が回らなくなるわけではありません。スポッティングと、軸脚の上に立つ練習を分けて確認しましょう。
スポッティングは「顔だけ速く動かす」ことではない
スポッティングでは、回転を始める前に正面の目印を決めます。体が回り始めても目印をできるだけ長く見続け、見続けられなくなったところで顔を素早く回し、再び同じ目印を捉えます。
顔を速く振ることだけが目的ではありません。どこを見るかを決め、適切なタイミングで同じ場所へ視線を戻すことが重要です。
ピルエットで目が回りにくくする4つの練習ポイント
1.正面に小さな目印を決める
鏡全体をぼんやり見るのではなく、壁や鏡の中から一つの目印を決めます。回る前と回ったあとに、同じ場所へ視線を戻せるか確認してください。
2.体を回さず、顔を戻すタイミングだけ練習する
足を動かさずに立ち、上体を少しずつ左右へ向けながら、目印をできるだけ長く見ます。目印が見えなくなる直前に顔を反対側へ動かし、再び同じ場所を捉えます。
首を強く振るのではなく、目印を見失う時間を短くする練習です。
3.最初は1回転ずつ止まる
連続して何度も回る前に、1回転して正面で止まる練習をします。目印へ視線が戻っているか、着地したあとに方向を見失っていないかを確認しましょう。
目が回る感覚が残っているときは、続けて回らず、落ち着いてから次の練習に進みます。
4.顔だけでなく、着地まで姿勢を保つ
スポッティングができても、上体が傾いたり軸脚から外れたりすると、回転後にふらつきます。正面へ視線を戻したあと、決められた位置に着地して止まるところまでを練習しましょう。
軸脚の上に立つ練習も分けて行う
回転へ入るときは、頭と上体が軸脚の上にまとまっているかを確認します。ルルベでは足裏全体を床につけて立つわけではないため、「足裏全体へ均等に体重をかける」とは考えず、先生から指導された足の使い方に合わせてください。
軸脚の上に立てると、回転後のふらつきを抑えやすくなります。ただし、姿勢が安定することと、回転によって目が回る感覚がなくなることは分けて考えましょう。
軸脚の上に立ちにくい方は、ピルエットが回れないときの確認点も参考にしてください。
スポッティングは繰り返し練習する
スポッティングは、方法を知っただけですぐにできるとは限りません。最初は体を回さずに目印へ顔を戻す練習をし、次にゆっくりした1回転へ進みます。
ダンサーは、繰り返し回転を経験することで、回転後の感覚や姿勢の変化に対応しやすくなることが研究でも報告されています。詳しくは、バレエ経験と回転後の姿勢制御に関する研究をご覧ください。
2回転で顔を戻すタイミングが合わない方は、ダブルターンで2回転目に崩れるときの確認点もあわせてご覧ください。
よくある質問
ピルエットで目が回ってしまう原因は何ですか?
回転すると、景色が流れる視覚情報と、内耳が捉える回転の情報が続けて入ります。回転を止めたあとも回っているように感じることがあり、目が回る感覚につながります。上半身の力みだけが原因ではありません。
顔の向きはどうすればよいですか?
回転前に正面の目印を決め、体が回り始めてもできるだけ長く見続けます。見続けられなくなったところで顔を素早く回し、同じ目印へ視線を戻します。
軸足への乗り方がよく分かりません。
頭と上体が軸脚の上にまとまっているかを確認します。まずは回転せず、パッセのルルベで止まれるかを練習してから、1回転へ進みましょう。
2回転を目指していますが、1回転より目が回りやすいです。
2回転では、正面の目印へ視線を2回戻す必要があります。まずは1回転でスポッティングと着地を確認し、その動きを保ったまま2回転へ進みます。
体の使い方から確かめてみたい方へ
スポッティングと、軸脚の上に立つ練習を分けて行うと、目が回る感覚と着地のふらつきを整理しやすくなります。まずは1回転ずつ止まり、同じ目印へ視線を戻せているか確認してみてください。
ここで案内しているのは、スポッティングやピルエットの技術指導、バレエレッスンではありません。イスから立ち上がる動作などを通して、片脚で立ったときに体のどこへ力が入りやすいか、立った姿勢をどのように支えているかを確かめる体験です。

